切らずに治す痔の日帰り手術
当院ではALTA療法やALTA併用療法による痔の日帰り手術が可能です
痔核の治療は排便習慣の改善や薬物治療(肛門への注入薬や内服薬など)が基本ですが、治療を続けても良くならない場合、出血や脱肛が問題になる場合は手術治療が必要です。
従来、痔核の手術は結紮切除術といって痔核を切り取る手術が主流でした。痔核そのものは切除することで治すことができますが、手術後の痛みや出血のリスクがあり、2週間ほどの入院を要することが一般的です。また、手術後の合併症として肛門の括約筋が緩くなったり、逆に肛門の狭窄を起こすリスクもあります。
これに対し、痔核を切り取るのではなく硬化剤(ジオン注®)を痔核に注射して痔核を固め、出血や脱肛を改善できるようになりました。従来では手術が必要とされたケースでも治療可能で、手術と遜色ない効果が得られることから、2005年に保険収載されています。このジオンを用いた治療をALTA(アルタ)療法といいます。治療効果だけではなく、従来の手術に比べて身体へのダメージが小さく入院が必要ないことからも患者様にとってのメリットは大きいといえます。
ALTA療法では1つの痔核に対して4カ所にジオンを注射します。これを四段階注射法といいますが、難易度が高い特殊な手技であり専門の資格を持つ医師のみが施行することができます。当院の院長はこの資格を有しており、ALTA療法による日帰り手術を積極的に行っています。
痔核には内痔核と外痔核があり、ALTA療法は内痔核に対して効果が期待できる治療法です。
外痔核に対しては基本的に適応外とされているため、治療が必要な外痔核もある場合は外痔核に対しては切除を行い、内痔核に対してALTA療法を行うという治療法が可能です(ALTA併用療法といいます)。従来の外痔核と内痔核をまとめて切除する結紮切除術よりも出血リスクや痛みが少なく、もちろん日帰りでの手術が可能です。
このような方にお勧めです
- お薬による治療だけでは痔核が治らない
- 痔核を治したいが、手術後の痛みが心配
- 仕事や学校を休みたくない
- 身体への負担が小さい手術を受けたい
- 手術後に肛門が緩くなるのは避けたい
など
※入院治療が必要な場合は提携先の医療機関を紹介いたします。
全ての痔核がALTA療法やALTA併用療法で治せるわけではなく、痔核の程度によっては入院した上での治療が必要です。また、患者様のお身体の状態によっては日帰りでの手術よりも入院での手術が望ましい場合があります。
入院が必要な場合には、信頼できる医療機関を紹介いたします。
このような方はALTA療法を受けていただくことができません
- 妊娠中や授乳中
- 透析療法中
- 子宮頸がんなどで放射線治療を行ったことがある
- コントロール不良な糖尿病がある
- 黄疸や腹水をともなう肝硬変がある
- 小児
- その他、診察で医師が不適当と判断した場合
など
当院の日帰り手術の主な流れ
- 問診・診察
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- 痔核の程度、普段の持病や内服薬などを確認し、日帰り手術が可能か判断いたします。
- 日帰り手術可能と判断すれば、手術前の検査(採血、心電図検査など)を受けていただきます。
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検査の結果、手術を行うのに問題ないと判断すれば日程について相談し手術日を決定しま
す(手術についての説明をお聞きいただき、手術同意書に署名いただきます)。
※入院での治療が必要と判断した場合は、提携先の医療機関を紹介いたします。
- 手術当日
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- 看護師による体調チェック、検温や血圧測定などを行います。
- 点滴を行います。
- 準備が整い次第、手術室にご案内します。
- 麻酔
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- ベッドにうつ伏せに寝ていただきます。
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尾骨近くから麻酔薬を注射します(仙骨硬膜外麻酔)。
※当院では、しっかりと肛門括約筋を弛緩させて痔核の状態を最終確認し、適切な部位に必要量のジオンを注射するために仙骨硬膜外麻酔を行っています。仙骨硬膜外麻酔が行えない場合には局所麻酔で行うこともあります。 - ご希望に応じて、手術に先立ち鎮静剤を投与します。
- ジオン注射
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- 治療対象となる痔核それぞれに対して、四段階注射法を行います(通常、3カ所ほどの痔核に対して治療を行うことになります)。
※下腹部に違和感や軽い痛みを感じることがあります。 - 痔核全体にジオンの効果が拡がるように肛門内のマッサージを行います。
- 治療対象となる痔核それぞれに対して、四段階注射法を行います(通常、3カ所ほどの痔核に対して治療を行うことになります)。
- 手術終了
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- 痛み止めの座薬と止血剤を入れて手術終了です。
- 手術後
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- 回復室で1時間程度休んでいただきます。
- その後、気分不快や出血などがないことを確認後、ご帰宅いただけます。
- ご帰宅後~
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- 排便は当日から可能です。
- 翌日に受診いただきます。
- 2週間程度は安静にしてください(出勤や通学に制限はありません)。
- 2週間は飲酒や刺激物の摂取を控えてください。
- 翌日以降は毎日入浴してください(肛門部の清潔を保ち、血行を良くすることが目的です)。
- 出血や脱肛などは比較的すぐにみられなくなりますが、ALTA療法の効果が固定するには数カ月ほどかかります。その間は定期的な受診が必要です。
- しばらくは注入軟膏の使用や便を軟らかく保つ下剤の内服が必要です。外来受診で経過をみながら調節していきます。
- 排便習慣や生活習慣が悪くなると再発リスクにつながりますのでお気をつけください(注意事項を記載したパンフレットをお渡しします)。
※患者様によっては治癒までの期間が長くなることもあります。
当院での日帰り手術の流れを説明しましたが、何よりも大切なのは患者様に納得して治療を受けていただき、最終的に「治療を受けて良かった」と患者様ご自身に思っていただけることです。当院では治療を受けられる患者様には期待できる治療効果とともに起こり得るリスクなどもきちんと説明し、ご納得いただいた上で治療を開始するように努めています。一般的には手術が望ましいと思われるような状態でも、患者様のご希望によりできるだけお薬による治療で経過をみさせていただくこともあります。無理に手術をお勧めすることはありませんのでご安心ください。